STRATFORD FESTIVAL
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AutoCAD で舞台セットを設計
カナダ、オンタリオ州の Stratford Festival でテクニカル ディレクターを務める Andrew Mestern 氏は、創造性とテクノロジーの課題に果敢に取り組んでいます。創造性とテクノロジーの両方を受け入れるのが、Mestern 氏のアプローチです。AutoCAD を使用して 3D プリントなどの他のテクノロジーを試すことによって、Mestern 氏は、観客を驚かせ、舞台に命を吹き込むすばらしい舞台セットを作り出しています。
Andrew Mestern 氏は、20 年以上にわたり、カナダとアメリカを股に掛けて舞台セットの設計に専念してきました。この 10 年間は、カナダ、オンタリオ州の Stratford Festival (英語) の専属テクニカル ディレクターとして活躍し、創造性とテクノロジーの課題に果敢に取り組み、すぐれた舞台セット設計を実現しています。これらの課題を抱え、CNC マシンであったり、3D プリンタであったり、実験の新しい機会も探っています。Mestern 氏は、常に AutoCAD を使用し、魅力的な舞台セットを実現しています。
「AutoCAD でほぼすべての作図や描写を行います」と Mestern 氏は言います。「アセンブリ図面を作成して、設営の際にすべてのパーツがどのように組み合わせられるのかを見せます。モデル構築とほぼ同じですが、対象は場面のセットです」
しかし、セット設計での AutoCAD の使用は、それだけにとどまりません。
セット設計用の 1969年式 Lancia C3 モデル の AutoCAD 図面(上)とレンダリング(下)。画像提供: Andrew Mestern 氏
2D では不十分な場合があります。3D モデルとレンダリングを用いることによって、コミュニケーションが非常に円滑になると Mestern 氏は語ります。通常は 2D の平面図にすぎないものを、AutoCAD の 3D モデリング機能を使用して、3D で表現された舞台セットに変換します。
「ときには、舞台デザイナーの要望や、大道具の製作担当者や美術担当者による施工可能性の制限などを、私が完全に理解していないこともあります」と Mestern 氏は言います。「1 つのシーンをレンダリングで完全に再現し、資材と照明を追加すると、セットがどのようになるかを視覚的に理解できますこれによって可能なことと不可能なことが実際に把握できるため、舞台デザイナーと担当チームにとって大きな価値があります」
また、舞台セットの設計については、観客を考慮に入れる必要があります。3D レンダリングを使用することによって、観客にベストな情景と体験を確実に与えられることを、関係者全員が検討できます。
AutoCAD によるシャンデリアの 3D レンダリング。画像提供: Andrew Mestern 氏
「舞台セットのレンダリングで重要な点は、目線です」と Mestern 氏は言います。「今は、AutoCAD を使用して、ステージの前に設置する手すりのレンダリングを行っています。手すりを設置する前に、最も高額な前列シートからどのように見えるか、設計者と私で探っています。新たに提案するステージのウォークスルーや装飾物など、平面の PDF ではうまくいかないときに、これをよく行います」
Mestern 氏は、3D を別の用途でも使用していて、小道具や舞台の機械装置の造形物を作成しています。
「AutoCAD で 3D モデルを作成したら、STL ファイルとして書き出して、3D プリンタに送信するだけで製作できます」と Mestern 氏は言います。「ときには、1/2 サイズのモデルを作成して、デザインの例を見せたり、特注品を製作したりします」
最近では、Mestern 氏は、白いガラス製のように見える、細長いティアドロップ型のアールデコ調シャンデリアを完成させました。これには、CNC マシンと 3D プリントを組み合わせて使用しました。
「舞台デザイナーが本から選んだ写真を基にして、AutoCAD で図面を作成しました」と Mestern 氏は言います。「その後、STL ファイルを CNC マシンに送信し、MDF でパーツを切り抜きます。同時に、シャンデリアの上部に付ける大きなキャップを 3D プリンタで製作しました。驚くような仕上がりで、思い描いたとおりのものができ上がりました」
アールデコ調シャンデリアの完成品。画像提供: Andrew Mestern 氏
Mestern 氏が最近手掛けたシェイクスピアの悲劇『コリオレイナス』でも、セット設計にテクノロジーを多く取り入れた手法が見られました。この悲劇の現代版では、車が重要な要素となっており、1969 年式の Lancia C3 の完全なレプリカが必要でした。本物の車を買おうと思い、ヨーロッパで 1 台見つけました。しかし、問題がありました。価格が 20 万ドルもしていたのです。Mestern 氏は、代わりに、モデル カーを 3D アセットとして購入しました。
「AutoCAD を使用して、モデルを解体し、車体に変更を加え、シャーシを作り、CNC で発泡スチロールを切り抜いて車の大部分を用意し、ファイバーグラスの型を作り、3D プリントでテール ライトなどを製作しました」と Mestern 氏は言います。「AutoCAD で作業し、1 つのプラットフォームだけでプロジェクトのすべてを実行できたことは、まさに完璧でした」
車でも、シャンデリアでも、その他のどのようなものでも、すべて AutoCAD に頼っています。
「私が AutoCAD を使用する理由は、シンプルな基本プランから、複雑な 3D モデルに至るまで、同じ図面で簡単に作業を移行できるからです」と Mestern 氏は語ります。「1 つの図面から、CNC マシンで切り抜く平面図を作成し、同時に、プリンタ用の 3D ファイルと、ディレクターや舞台デザイナーに向けたレンダリングをエクスポートしたりできます。私たちは舞台デザイナーのスケッチを解釈し、シーンの独自の制約を設定しているので、製作しているセットにほぼ忠実な状態のものを、デザイナーに見せることができます。舞台デザイナーと美術製作者により明確に情報を伝えることができれば、完成したセットはよりすばらしいものになります」
『コリオレイナス』で使用された車、製造中(上)と完成品(下)。画像提供: Andrew Mestern 氏